睡眠の研究に20年近くも携わりながら「不眠」で悩むことはほぼゼロ。
そんなわたしに椎名さんはこうおっしゃいました。
「(睡眠に関する)専門書?たくさん読みましたよ」
「でもね、睡眠の研究者はみんな睡眠に悩んだことないんですよ……」
35年間も不眠症の椎名誠さんは、睡眠に関するさまざまな本を読んだそうです。
でも専門書は読んでも全然おもしろくない。
その時に、椎名さんは
きっとこういう本を書いている人は 自分が不眠症でも何でもないから面白くないのだ
と思ったそうです。
ならばと椎名さんは 「ぼくは眠れない」(新潮社)という本を書く事で自ら不眠解消の糸口を探ります。
アカデミカルな論旨でなくて良いので自分で書いてみようと考えたのです。
いつの間にか睡眠薬が手放せなくなった椎名さんは
「やわらかな眠り」を取り戻そうと試行錯誤します。
(詳しくは椎名さんの著書を読んでいただけたらと思います)
わたしは、不眠が問題となるケースのひとつが 「理想」と「現実」のギャップだと思っています。
「昔はあんなに眠れた。昔と同じように、ぐっすり眠りたい」
「一度も目覚めずに眠りたいのに、どうしても夜中に目が覚めてしまう」
わたしの所にもそんな悩みで、相談にいらっしゃる方がたくさんいます。
でも、どちらも叶わない夢なのです。
(年齢の変化によるレム睡眠、ノンレム睡眠の割合の変化)
上のグラフを見てください。
年齢を重ねると、どうしても深い眠りは少なくなります。
中高年と呼ばれる年代になると深い眠りが減り、 トイレの回数が増えたり、小さな物音で睡眠途中に目が覚めやすくなる。
朝早く目が覚めて起きてしまうのも、高齢者の睡眠の特徴なのです。
まずは、若い頃のような深い眠りを求める事はしない。
安定したねむりを得られる「睡眠環境」を整える事が大切になります。
ぐっすりではなく、コンパクトな安定した眠りを心がけるということ。
たくさん起きてしまうことのないように眠りを妨げる原因から遠ざかり、
おふとんの中にいる時間は、「眠ることのできる時間」だけにするということ。
眠れないのに、おふとんの中で悶々と考え事をするのは、
自分自身に不眠のイメージを強く印象つけてしまいますのでマイナスです。
眠りを妨げる原因は、ひとそれぞれ。
専門書には科学的根拠のあるいろいろな工夫が書かれていますが
「自分の眠れない原因に対して効果のある方法をみつけるところから 始めなければどれも参考にならない」
となってしまうわけです。
次回は、眠りを妨げている原因を見つけて 具体的に快眠の近道を探る方法についてご紹介します。
お楽しみに~