東京ヴェルディ 冨樫剛一監督 スペシャルトーク(後編) 試合直前のミーティングはわずか2分。その裏には隠された努力があった


プロサッカー選手になれたことは、睡眠のおかげだと思ってるんです。

高橋

シーズンも佳境に入ってきました。現在の睡眠状況はいかかですか?

 

冨樫

悪いですねー。悪すぎるって言ってもよいと思います。
自分の身体の成長やプロサッカー選手になれたことは、睡眠のおかげだと思ってるんです。ユース時代も学校から帰り、少し仮眠して、ヴェルディで練習して、自宅に戻って寝る。そして、プロになってからも睡眠が主体のライフサイクルでした。実際今までも眠れないってことはほとんどなかったです。
ところが、ヴェルディの監督に就任後は、眠れないとはこういうことか、と思い知らされるくらい、睡眠環境が悪くなってしまいました。今は寝たのか寝ていないのかよく分からない状態で朝6時くらいに起きて、直ぐに自宅を出るという感じです。自宅に戻ってからもミーティングのための試合のビデオ編集をするのですが、それにかなり時間がかかっています。選手に見せる約8分の映像なんですが、まず対戦相手の過去5試合くらいのゲームを見直して、プレースタイルや戦力を分析します。その後重要なプレーの映像を精査して、抜き出して、整理して、何度も見直すという作業をほぼ毎日繰り返しています。クラブハウスでやることもできるんですが、あまり監督が遅くまで残っていると周りのスタッフが気をつかうので自宅でやることが多いですね。また、サッカーのトレンドってどんどん変化していますので、海外の最新のプレーを見てヴェルディの戦略に活かすということもしています。
なのでどれを削るかというと、睡眠時間しかないという現状ですね。昨晩最後に覚えている時刻は4時何分という時間でした。

東京ヴェルディ 冨樫剛一監督

深夜までビデオの編集作業をし、朝6時に起床してトレーニングへ。ご自身でも「悪すぎる」という睡眠状況を改善すべく、エムールの敷き布団「ボディサポーター」を試していただきました。

高橋

体調は大丈夫ですか?日中眠くなりませんか?

 

冨樫

やっぱり眠くなりますね。練習中は気を張っているので大丈夫ですが、昼ご飯を食べた後はさすがに眠くなります。
普段一番寝れるのがアウェー試合の前泊の夜ですね(笑)今はパソコンで映像を編集するソフトがあるので以前に比べれば楽になりましたが、コンサドーレ札幌のコーチ時代はビデオテープでしたから今の倍は時間が掛かっていましたので、徹夜することも度々でした。それでも練習はありますのでピッチに立って見ているわけですが、途中「ガァッ!」と耳元で音が聞こえるんですね、それ、僕のいびきなんです。その時はもう死ぬなって思いましたよ(笑)

高橋

映像の編集は、普通監督がするものなのですか?

 

冨樫

人それぞれですけど、そういうのがお好きな監督さんは他にもいますね。僕自身映像を編集すること自体は好きではありませんが、人に任せるよりもミーティングで選手に伝える内容を精査して組立てる事に役立てています。プレーの性質上サッカーはプレーが止まることがほとんどありません。ミーティングで話す内容は、疲労と脳内酸素が減った極限状態でも思い出すことのできるシンプルなトピックに絞ることが重要だと思っています。

東京ヴェルディ 冨樫剛一監督

ミーティングは短時間。選手たちに「シンプルかつ端的」に要点を伝えるために、自ら労を惜しまず深夜まで対戦相手の研究を重ねる。

疑問を投げかけて選手自身に自然に考えさせる仕組みが大事

高橋

ミーティングにかける時間はどれくらいですか?

 

冨樫

試合直前のミーティングは2分程度ですね。毎週木曜日のミーティングが10分、試合当日のミーティングが長くても15分、試合直前のミーティングが2分という感じです。先程も言いましたがプレーが止まることのないサッカーですので、耳に入って、思い出せるキーワードは限られているんですね。
僕の場合は基本的に3つだけ。「攻撃」、「守備」、「精神」の3つです。シンプルかつ端的に伝えることがとても大事だと思っています。さらに言うとミーティングが苦手な選手に無理やり言ってもダメなんです。だからシンプル、端的に。しかも答えを出してはダメなんですよね。疑問を投げかけて選手自身に自然に考えさせる仕組みが大事。これは結構難易度が高いんですけどね。

東京ヴェルディ 冨樫剛一監督

2014シーズン途中から、自身初のトップチーム監督に就任し、低迷していたチームを立て直しJ2残留のミッションを達成。今季は昨季の20位から大きくステップアップしJ1昇格争いに絡んでいる。個性的な選手たちをまとめあげ「選手自身に自然に考えさせる」という冨樫監督の手腕に、今後更に期待が懸かる。

高橋

最後の質問です。今シーズン残り試合はわずかとなりました。残り試合に向けての抱負、そして今後のビジョンについてお聞かせください?

 

冨樫

J1昇格に届く順位にいる事は選手はもちろん、スタッフそしてサポーターの方の応援と想いがここまでの結果につながっていると思います。今まで通り思い切ってやりたい。選手が思い切ったプレーが出来ればおのずと結果が付いてくると思っています。
僕がトップチームの監督を任されるなんて思ってもみませんでした。こういったやりがいと責任のある仕事をできていることに感謝しています。まだまだ諸先輩方に劣る部分が多々あるので、もっともっと自分自身を成長させたいという欲は人一倍あります。何が自分自身に合っているのかまだ分かりませんし、指導者としての考え方、方向性で確立されたものもまだありません。選手の成長スピードに負けないくらい、自分自信も成長しなければならないと思っています。
プロスポーツにおいては、選手自身はもちろんですが、選手を支えるトレーナー、マネージャーの日々の努力があってこそ今のコンディションが保たれている。トレーナーにとっては実は練習後が本番なんですよね。シーズン後半になれば怪我をしていない選手は殆どいなくて、寝る暇を惜しんで選手の身体のケアのために必死にマッサージを試みてくれているんですよ。マネージャー、トレーナーが普段何気なくやってくれていることは当たり前じゃないんですよね。
今の選手の努力、トレーナーの頑張りを見ていると、だったら俺は結果に対して全責任を取る!と自然に思えるんですよね。

高橋

今日はどうもありがとうございました!

東京ヴェルディ 冨樫剛一

選手だけではなくスタッフに対しての心配りも欠かさない冨樫監督。チームの為には労を惜しまないその献身的な姿勢と強い責任感、そして何よりも明るく大らかな人柄が、人を惹きつけ、チームにポジティブな空気を呼び込んでいるのかもしれない。

インタビュー後記

東京ヴェルディ 冨樫剛一監督

おおらかで明るいイメージのある冨樫監督ですが、日々深夜までとことんサッカーを突き詰め、仕事に没頭しているという貴重なお話をお伺いすることができました。その反面、睡眠状況はとても良いとは言えない状況。私達も寝具屋として、冨樫監督の睡眠状況を改善するお手伝いをしないわけにはいきません。早速、弊社の敷き布団をお送りさせていただいたところ、「びっくりするくらいぐっすり眠れました」と、ご丁寧にも冨樫監督からお便りが届きました。寝具屋冥利につきる、嬉しいご報告です!
ヴェルディファンの皆様、睡眠不足で冨樫監督の采配に影響が出ないよう、私達も精一杯サポートさせていただきますので、今後の冨樫監督と東京ヴェルディの活躍に、ぜひご注目ください!

ねむりくらし研究所 高橋幸司

前編はこちら
「J1への階段を駆け上がる東京ヴェルディ。今期の躍進は、選手自身が自然に考える仕組みにあった」