脳のメカニズムと睡眠


エネルギーを大量消費する神経細胞

脳内の神経細胞は伝達に特化した細胞です。脳の重さはおよそ1.3kg。体重63kgの人では体重比でわずか2%しかありません。しかしエネルギーは体重比で18%も必要になります。 神経細胞が働いている間はさまざまな化学反応、代謝、損傷、栄養補給、代謝産物の排出があります。これらを神経細胞の助手であるグリア細胞が助けています。
コンピューターとは違い、動物は休みなく動き続ける事は出来ません。疲労してくると体内環境を整える副交感神経系の働きが
優勢になり、抹消血管が膨張して体熱を外部に発散させ、体温を低下させます。脳への血流は低下し、同時に脳の温度も少し低下します。
活動を低下させる事によって脳が休養をとる。これが睡眠になります。脳の活動低下、つまり睡眠は受動的ではなく能動的に行われます。睡眠中に損傷は修復され、代謝産物の排出、新たな栄養補給が行われます。
睡眠は翌日活動するための準備期間と言えます。

安静時における器官別のエネルギー消費量_63男性

参考・引用/睡眠検定ハンドブック(全日本病院出版会)

覚醒や睡眠にかかわる脳内物質

 

セロトニン

朝、目が覚めると交感神経系によって精神や身体の活動状態が上がってきます。まず神経伝達を行う細胞(セロトニン細胞)が働きます。セロトニン細胞は脳幹にあって、脳内にくまなく張り巡らされています。 セロトニン細胞は、規則正しいリズミカルな運動に反応します。リズミカルな運動を定期的に続けるとセレトニン細胞が活性化して気分がよくなります。逆にセロトニン細胞の働きが悪くなると、うつ状態が引き起こされると言われています。 18

メラトニン

夜間になるとセロトニン細胞は活動を低下させます。この時に合成されるメラトニンはセレトニンが形を変えたものです。ヒトでは「視交叉上核(しこうさじょうかく)*視交叉の直上の視床下部にある神経細胞の集団からなる小さな核。概日リズムを刻む体内時計の機能をもっている」からの信号は、長い迂回路を介して上顎部交感神経節を経て松果体に到達します。ここでセロトニンは酵素によってメラトニンに変わります。朝の光を浴びてから14~16時間経過する夜間にはセロトニン量が減少しメラトニンが増加します。

グルタミン酸とGABA(ガンマアミノ酪酸)

わたしたちが何かを考えたり、行動に移す時には、思考回路や運動回路がうまくはたらくように調整されていなければなりません。そのためにグルタミン酸を含む細胞とGABA(ガンマアミノ酪酸)を含む細胞がペアになって働いています。グルタミン細胞が活性化すると興奮が、GABA細胞が活性化すると沈静が引き起こされます。GABA細胞がうまく働かないと過剰興奮が引き起こされます。

ドーパミン

快楽中枢に働きかけるドーパミンは先祖代々、受け継がれている物質で、苦しくても目標を達成した時などに分泌されます。例えばマラソンを走り切った後に感じる喜び、山登りで頂上に到達した時に得る感動は、ドーパミン物質が快楽中枢に働きかける事で得られます。ただしドーパミンが増えすぎると思考が統一できなくなり(統合失調症の症状と関連があると言われています)、減りすぎると運動障害が引き起こされます。(パーキンソン病)

アセチルコリン細胞

アセチルコリン細胞は脳内のさまざまな場所に存在します。延髄にある迷走神経核をはじめとする副交感神経系で使われています。 覚醒や睡眠にかかわる脳内物質

参考・引用/睡眠検定ハンドブック(全日本病院出版会)

 

不眠症のタイプ

不眠症

中途覚醒(夜中に目が覚めてしまう)

就寝前にお酒やコーヒー、お茶など水分を飲みすぎたり、就寝時間が普段より2、3時間早いと起こりやすい・ただし、〝うつ〟など心の不調や睡眠時無呼吸症候群などが原因の場合もあるのでご注意を

入眠障害(なかなか寝付けない)

寝床に入る時間と眠い時間がずれると起こりやすい。寝る直前までパソコンやテレビなど見続けるとリラックスできず、寝つきは悪くなりやすい。ストレスや心配事も入眠障害の要因になりやすい。 不眠症有病率

熟眠障害(眠りが浅い)

日中も長時間、寝て過ごす場合、眠りの環境が変化した場合にも起こりやすい。就寝前のアルコールも眠りを浅くしてしまいます。

早期覚醒(早く目覚めてしまう)

高齢者に多く見られるタイプで、寝床に入る時間が早すぎる場合や、就寝前のお酒が原因で起こることも多い。 il_02_02