ねむりの特徴


わたしたちは夜、決まった時間にまとめて睡眠をとりますが、これは野生動物にはない人独特の睡眠のとり方。野生動物は昼間に寝て夜に活動する「夜行性(やこうせい)」と、夜に寝て、昼間活動する「昼行性(ちゅうこうせい)の2種類がありますが、いずれもわたしたち人間のように長時間まとめて眠り続ける事は稀です。野生動物は常に外敵から襲われる危険性と隣り合わせで暮らしているからです。文明や文化を手にした瞬間から眠りの仕組みまで大きく進化していった人類の眠りの秘密や仕組みについて探ります。

睡眠の役割

睡眠は脳による脳のための管理技術で、脳を「創る」「育てる」「守る」「修復する」「活動させる」などの役割を果たします。胎児の眠りは脳を覚醒に導きますがこれを動睡眠(レム睡眠)といいます。レム睡眠の役割が進行して大脳が覚醒できるようになると、今度は静睡眠(ノンレム睡眠)が出現して脳を「守る」「修復する」という役割を果たします。成人になってからもレム睡眠は重要な役割を果たし続けます。大脳が自動的に目覚められるのは振るから脳内に宿るレム睡眠(目覚めるためのねむり)が一定間隔で大脳を活性化するからです。レム睡眠とノンレム睡眠。ふたつの睡眠が役割を分担し、協調しながら脳をよりよく活動させるのです。

参考:睡眠検定ハンドブック/日本病院出版会

ねむくなるのはなぜ?

脳を休ませるための眠気

01脳を休ませるための眠気眠気を感じるのは大脳・小脳・視床下部などから分泌されるホルモン物質が脳と身体をリラックスさせるセロトニンの分泌を促すからです。はじめに分泌されるホルモン物質は刺激を受けて活動を活発にさせる働きのあるノルアドレナリンという物質。でもノルアドレナリンによって分泌されたセロトニンがノルアドレナリンの活動を抑えるメラトニンを分泌させてはじめて、脳は眠りに入れるのです。 脳が休むためにはまず脳自体が眠る準備を行わなければならないのです。

体内時計による眠気

il_01_01人は昼行性の生物。これは遺伝子によって決められています。わたちたちは誰しも本来は日中に活動して夜になると休息するというリズムの中で生活してきました。朝に目が覚めて日光の光を浴びることでセロトニンが分泌されます。同時に約14時間後には眠気を誘うセロトニンが分泌されるようにセットされます。 つまり起きた時点でわたしたちの体内時計は次に休息する時間がセットされるのです。

時差ボケによる眠気

il_01_02昼間でも時差ぼけで眠気を感じるのは、体内時計がそれまでの生活環境に合わせてセットされているためです。体内時計は日光を浴びなくても大体25時間サイクルでリズムをとっています。ところが突然周辺環境の時間が変わってしまうと眠くなるはずの時間にリセットする役割である太陽の光を浴びることになります。時差ぼけは体内時計がタイマーどおり機能して良いのか周囲からのリセットの指示を信じて良いかわからず混乱する事で起こります。

休息のための眠気

山登りや激しい運動後に疲れて眠くなるのは体が休息を必要としているからで、溜まった疲労物質を排出して壊れた細胞を修復します。成長期には運動によって与えられた刺激と睡眠中の成長ホルモンの働きによって身体の器官が成長します。

4風邪を引いた時や体調が悪い時に眠くなるのは、体を回復させるのに必要な免疫物質が眠気を誘うからです。花粉症の人が眠くなるのも身体の回復機能が働いて免疫物質が過剰に出ているからです。
04勉強すると眠くなる

勉強中にねむくなる理由

勉強中にねむくなるのは脳から「情報回路が故障する前に休みたい」というサインが出るからです。
日中活動している間は、無意識の間にさまざまな情報が五感から脳へ流れ込んできます。その中から必要な情報を記憶として保管しておくための選別や書き換え作業は睡眠中に行われます。
情報量が一定ラインを超えると脳は外部からの情報を遮断しそれまでに入ってきた情報を整理するために眠くなるのです。

レム睡眠とノンレム睡眠

ヒトのねむりには「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2種類があります。 レム睡眠は体を休ませるねむり。レム睡眠は10~20分程度で、体はゆったりと弛緩し少していて多少ゆさぶったくらいでは目は覚めません。脳波はこの時、起きている時と同じような活動をしていて急速な眼球運動がみられます。身体はねむっているのに脳は覚醒に近い状態にあるからです。

ノンレム睡眠は脳を休ませるねむり

睡眠の約80%を占めていて1日の疲れた体を癒し再生する働きがあります。ノンレム睡眠の時は人のさまざまな生理的な機能(血圧・心拍数・体温・脳の活動など)が低下しているため身体が深い休息状態にあります。また身体の臓器、肌の修復、骨の維持や成長に必要なホルモンもノンレム睡眠時に分泌されます。

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ヒトは「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を繰り返す進化の過程の中で大脳を大きく発達させてきました。健康なヒトはこの2種類の眠りが約90分サイクルで繰り返されます。レム睡眠とノンレム睡眠を規則正しく繰り返す事は、脳を発達させた動物つまりヒトにとって、生きる上で最も大切なベースになります。

レム睡眠とノンレム睡眠の特徴

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ねむりにつくとまず1時間から2時間ほどノンレム睡眠状態に入りぐっすりねむります。その後、ねむりは浅くなって行きレム睡眠に入り、またノンレム睡眠の段階に。この繰り返しは一晩でおよそ4回~6回繰り返されます。